土壌環境学研究室では、土壌圏の科学を中心に、水圏や大気圏との繋がりも意識しながら主に以下の研究を進めています。


北陸地方に分布する多種多様な土壌資源の包括的理解

北陸地方は海岸線から50kmで3000m級の高山帯に到達するという特色のある地形を有します。また、冬季には季節風の影響により大量の雪が降り積もり、春季には大陸から大量の黄砂が降り注ぎます。このような世界的に見ても稀有な地形・気象条件を背景に、多種多様な土壌が北陸地方には分布しています。当研究室ではこれらの土壌を資源として捉え、理解し分類することで、農業や地中熱利用など我々の生活に有益となる基盤情報の取得を目指しています。

現在、当研究室で取り組んでいる研究対象の一つに、北陸地方の「黒ボク土」があります(下写真の一番左)。黒ボク土とは火山灰を母材として生成した土壌です。かつて黒ボク土は肥料成分の一つであるリン酸の効きが悪く、また、一部の黒ボク土はアルミニウム毒性も発生するため、農業に向かない問題土壌とされてきました。しかし、現在はこれらの問題も解決し、農業生産性の高い土壌とされています。

これまでの調査によって北陸地方には黒ボク土がスポット的に点在していることが分かってきました。ところが、その近傍には火山灰の給源となった火山がないことから、その成因ははっきりと分かりません。そこで、当研究室では同位体やルミネッセンスなどの技術を駆使することで、成因解明を試みています。

写真 石川県に分布する土壌の一例(左から、金沢市犀川河岸段丘面の黒ボク土、能登半島穴水町の赤黄色土、石川県林業試験場の褐色森林土、石川県立大学の土壌)

 


農耕地におけるマイクロプラスチックの動態解明

近年、海洋のマイクロプラスチック問題が世界中の人々の関心を集めています。これらの海洋のマイクロプラスチックの起源はもともと陸域にあるので、汚染拡大を阻止するためには陸域からの発生源を明らかにし、そこからの排出を抑制することが効果的です。

意外と知られていないのですが、農耕地ではプラスチックを大量に使用しています。例えば、農業用マルチや被覆肥料(肥料成分の溶出時間を制御するためプラスチックで被覆した肥料)などが挙げられます。これらは使用後十分に回収されず、農地に残存している光景がよく見られます。これらの残留物が太陽光によって劣化し、耕起によって物理的に微小化し、マイクロプラスチックとなっているかもしれません。そして、農耕地で使用されたプラスチックは農業用水の流れとともに海洋へ移行することも考えられます。しかし、陸域におけるプラスチック研究自体が始まったばかりで、農耕地に関してはほとんど知見が集積していません。そのため、当研究室では農耕地におけるマイクロプラスチックの動態を明らかにすることを目的に日々研究に取り組んでいます。

写真 農業由来のプラスチック(写真中央部の白粒)左:水田、中央および右:海岸

 


未利用資源の農業利用

下水汚泥やスラグなど産業廃棄物として処理されている未利用資源を肥料や土壌改良資材として農業分野で有効活用できないか、民間企業や他大学と共同で研究を進めています。具体的には以下の研究が現在進行中です。

・ 下水汚泥と未利用バイオマスの混合メタン発酵残渣の肥料効果

 (国土交通省B-DASHプロジェクト)

・ 使用済み脱硫触媒から有価金属回収時に発生する脱リンスラグの肥料効果

 (民間企業との共同研究)

・ 水稲栽培における竹チップマルチの施用効果

 (金沢大学との共同研究)

写真 ダイズや水稲の栽培試験の様子

 


大気中フミン様物質の動態・化学構造・機能に関する研究

当研究室は土壌が専門の研究室ですが、大気の研究も行っています。大気エアロゾルや大気水相中には水圏や土壌圏のフミン物質と化学構造が類似したフミン様物質(HULIS)がかなりの割合で含まれています。これらの物質は界面活性能を有し、可視から紫外領域に光吸収性を持つことから、有害大気汚染物質の輸送や気候変動に大きな影響を与えていると考えられています。そのため、世界中で盛んに研究が行われていますが、日本ではほとんど注目されず、国内における大気中HULISの動態は十分な理解が進んでいません。そこで当研究室では、HULISに関する先駆的な研究を発表し続けている早稲田大学の大河内研究室と共同で、HULISの動態・化学構造・機能の関係を調べ、HULISが大気環境に与える影響を評価する研究を進めています。

写真 サンプリング風景(左:富士山頂における雲水のサンプリングの様子、中央:新宿の夕暮れ、右:能登スーパーサイトにおける大気エアロゾルのサンプリングの様子)